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帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは?

帯状疱疹は、皮膚に水疱(水ぶくれ)や発疹を引き起こす病気で、一般的に「帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされます。
この疾患は、疼痛やかゆみといった症状を伴うことが多く、特に高齢者や免疫機能が低下している人に影響を及ぼすことがあります。

帯状疱疹の一般的な症状

帯状疱疹は、典型的には特定の皮膚領域に発疹や水ぶくれが帯状に出現することで識別されます。
これらの症状は通常、体の片側に現れ、特に脊椎の周りや胸部に多く見られます。
痛み、かゆみ、痺れ、または刺すような不快感を覚えることが一般的です。

疼痛の程度は個人差があり、軽度から非常に強い痛みまでさまざまです。
帯状疱疹の症状は通常、水疱が形成されてから2週間から4週間続きます。その後、水疱が破裂し、かさぶたが形成されます。

帯状疱疹の原因

帯状疱疹と水痘は、同じウイルスによる疾患であり、水痘ウイルス(水ぼうそうウイルス)によって引き起こされます。
水痘は通常、幼少期に感染し、その後ウイルスは体内に残留します。

帯状疱疹は、水痘ウイルスが再活性化した結果として発症します。
つまり、帯状疱疹と水痘は同じウイルスに起因する疾患であり、過去に水痘に罹患した人は帯状疱疹に罹患するリスクがある点に留意すべきです。

ウイルスの再活性化は、通常、免疫機能の低下、高齢化、ストレス、または他の疾患による免疫抑制に関連しています。
感染源は、帯状疱疹の水疱から生じるウイルスが、他の人に感染する可能性がある点に留意する必要があります。

帯状疱疹の治療方法

帯状疱疹の治療は、原因となっているウイルスを抑える薬と痛み止めが中心です。
早期の診断と治療が重要であり、治療を開始してから症状が悪化する前にアクションを起こすことが推奨されています。

抗ウイルス薬による治療

内服薬である抗ウイルス薬が一般的に処方されます。これらの薬はウイルスの増殖を抑制し、症状の緩和に役立ちます。
ウイルスはどんどん増殖するためできるだけ早く、できれば皮疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を投与されることが望ましいです。
また、抗ウイルス薬の使用が早ければ早いほどウイルス増殖が抑えられるため、重症化や帯状疱疹後神経痛を予防できる確率が高くなります。

痛み止めで痛みを止める治療

帯状疱疹の痛みは、発疹が現れる前に感じることが一般的です。この皮膚の痛みに対して鎮痛剤が使用されることもあります。

痛み止めの治療は、基本的には痛みに対処するもので、帯状疱疹自体を抑えるためには抗ウイルス薬が必要です。
もしも夜でも眠れないほどの激しい痛みが続く場合には、ペインクリニックなどで行われる神経ブロック治療が考慮されます。
神経ブロックは、局所麻酔薬を神経の近くに注入することで、神経の伝達を一時的に遮断する治療法です。

塗り薬による治療

塗り薬による治療は、水ぶくれや赤みを抑えるために行われます。
塗り薬の種類は、抗ウイルス薬や抗生物質、ステロイド剤などがあります。塗り薬は、水ぶくれが出てから72時間以内に使用することが効果的です。
塗り薬を使用する際は、清潔な手で優しく塗り込み、水ぶくれを潰さないように注意が必要です。
また、塗り薬を使用した部位は清潔に保ち、他の人との接触を避けましょう。

処方された薬は、きちんと決められた量や期間使用することが大切です。
用量を守らないと効きが薄れたり、一定の期間使わないと効果が期待できない薬もあります。
医師の指示通りに薬を続けないと、治りかけた症状が再び現れたり、治るのが遅れたり、時には治らなくなってしまうことも。

だからこそ、自分で薬を勝手に中止しないようにしましょう。
そして、薬を飲んでいて体調が変だなと感じたら、すぐかかりつけの医師に相談してください。

帯状疱疹を予防するためには、帯状疱疹予防接種が利用可能です。
このワクチンは特に高齢者に勧められ、再発のリスクを軽減する助けになります。

帯状疱疹の合併症と後遺症

帯状疱疹は、合併症や後遺症を引き起こす可能性があります。

帯状疱疹後神経痛

最も一般的な帯状疱疹の合併症は、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる疼痛症状です。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の皮疹が治まった後も、神経に関連する持続的な痛みが続く状態を指します。

この痛みはしばしば非常に強烈で、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
帯状疱疹後神経痛は高齢者に特に多く見られ、早期治療と予防接種がその発症を軽減するのに役立ちます。
帯状疱疹の合併症として、帯状疱疹が目の周りに発生した場合、眼に深刻な損傷を与える可能性があります。
角膜炎や視覚障害が発生する危険性があるため、眼の症状がある場合には早期治療が不可欠です。

治療は主に内科やペインクリニックで行われ、抗うつ薬や神経痛に効く鎮痛薬などの薬物療法、神経ブロック療法、レーザー治療、鍼灸治療などがあります。
しかし、神経が傷ついた「神経障害性疼痛」のため、通常の痛みよりも治療が難しいことも。その中で、「脊髄刺激療法」が効果的な治療法の一つとされています。

帯状疱疹性顔面麻痺

帯状疱疹が顔面神経に影響を及ぼすこともあり、これは「帯状疱疹性顔面麻痺」と呼ばれます。
この症状は、顔の筋肉の麻痺を引き起こし、笑顔やまばたきなどの顔の動きに問題を生じることがあります。

治療は発症してから3日以内に耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診するのがポイントです。
外来での診察では、顔面神経麻痺の原因を見つけることができます。
原因が特定されると、治療方法が決まり、早い段階で原因を特定することが回復にとって非常に重要です。
もし顔面神経麻痺の可能性がある場合は、すぐに近くの耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診しましょう。

その他の合併症

帯状疱疹が発症した場所によっては、特有の合併症が発生することがあります。
例えば、帯状疱疹が初期に鼻の周りに皮膚症状を引き起こすと、目に関連する症状が頻繁に見られます。
角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などが発生し、視力の低下や失明につながることも。

帯状疱疹の水疱が感染することもあるため、適切なケアと衛生が必要です。
水疱を触ったりかきむしったりしないようにすることが重要で、感染の拡大を防ぐ役割を果たします。

帯状疱疹の予防策

帯状疱疹を予防するためには、帯状疱疹予防接種があります。
このワクチンは、高齢者や免疫機能の低下した人に推奨されており、再発のリスクを軽減するのに役立ちます。

帯状疱疹の予防接種について

帯状疱疹の予防法としては、ワクチン接種があり、帯状疱疹の発生率や重症化率を低下させる効果があります。
現在日本で承認されているワクチンは、シングリックスと弱毒生水痘ワクチンの2種類です。
シングリックスは、ウイルスの一部を用いた不活化ワクチンで、50歳以上の人に対して高い予防効果と長期的な持続効果(約10年)があります。
シングリックスは2回接種が必要で、他のワクチンと比較して局所性副反応の頻度は高いですが、いずれも3日前後で消失するとされています。

弱毒生水痘ワクチンは、ウイルスを弱毒化した生ワクチンです。中程度の予防効果がありますが、効果は時間とともに低下します。
弱毒生水痘ワクチンは1回接種で済みますが、妊娠中や免疫不全の人には接種できません。

どちらのワクチンも自費診療ですが、一部自治体では助成制度があります。

免疫力を高めよう

帯状疱疹を防ぐには、免疫力を高めることが重要です。免疫力を高めるためには、以下のことに注意しましょう。

・バランスの良い食事をとる
・十分な睡眠をとる
・ストレスを適切に管理する
・適度な運動をする
・喫煙や過度の飲酒を控える
・定期的に健康診断を受ける

帯状疱疹は、予防することも治すことも可能な感染症です。
自分の免疫力を高めるためにも、日常生活で食事や睡眠をしっかりとり、適度な運動やストレス管理を心がけましょう。
また、帯状疱疹の初期症状に気づいたらすぐに医師に相談しましょう。

帯状疱疹はがんの原因?

帯状疱疹はがんのリスクが高いという説がありますが、本当でしょうか?
実は、帯状疱疹自体はがんの原因になるわけではありません。
しかし、帯状疱疹は免疫力の低下を示すサインであることが多く、免疫力が低下するとがんにかかりやすくなるということは科学的にも認められています。
したがって、帯状疱疱を発症した場合は、単に皮膚の問題だけではなく、全身の健康状態にも注意を払う必要があると言えるでしょう。
特に、高齢者や慢性的なストレスを抱えている人、他の基礎疾患を持っている人などは、定期的に健康診断を受けて、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。

帯状疱疹の増加と注意が必要な理由

帯状疱疹は増加傾向にあり、その理由として高齢者人口の増加が挙げられます。
高齢者は帯状疱疹にかかりやすく、症状が重症化することがあります。
したがって、高齢者への予防接種の普及が喫煙禁止などの健康キャンペーンと同様に重要です。

帯状疱疹は重要な疾患であり、早期治療や予防策を活用することで合併症や後遺症を軽減できます。
帯状疱疹に関する正しい知識と予防策の普及が、これらの問題を軽減するのに役立つでしょう。

帯状疱疹はその厄介な性質からくる合併症や後遺症によって、個人や社会に影響を及ぼす可能性があるため、十分な注意と正しいケアが必要です。
高齢者や免疫機能が低下している人々を支援し、帯状疱疹に対する予防措置を強化することは、健康な社会を築く一環として重要です。

帯状疱疹に関する正しい情報と予防策の普及が、これらの問題を軽減するのに役立ちます。
帯状疱疹はその厄介な性質からくる合併症や後遺症によって、個人や社会に影響を及ぼす可能性があるため、十分な注意と正しいケアが必要です。
高齢者や免疫機能が低下している人々を支援し、帯状疱疹に対する予防措置を強化することは、健康な社会を築く一環として重要です。